現代に陰陽師は…

 初対面の人に「陰陽道家の高橋です」と私が名乗ると、「え、高橋さんは陰陽師ではないのですか?」と聞き返されることがよくある。その時に私は、「ええ、私は伝統的な陰陽道を生業とする『陰陽道家』ですが、『陰陽師』ではありませんよ」と答えているのである。…(中略)…確かに、陰陽道を表芸にする人間を広義の意味での「陰陽師」と呼んでもよいのかもしれないが、「陰陽道」は平安時代に日本で独自に成立した国立の占術・呪術集団であり、江戸時代の土御門安倍家が従来の「陰陽道」を神道化した天社神道(または、安家神道)系の流れやその系譜を引いていない、あるいはそれらとは何の関わりもない人々が、「陰陽道」、あるいは「陰陽師」と名乗ってよいものかどうかは、私は大いに疑問に思っている。これは別に私独自の考えではなく、現代においても天社神道の系譜を引く人々、あるいは伝統的な陰陽道を学問的(私的・公的を問わない)に研究している人々の多くがそのように考えているのである。…(中略)…さて、本題の「陰陽師」という名称であるが、これは現代風にいえば「外交官」とか、「警察官」というような国の公的機関から認可・任命された場合にのみ使用が許される公的な官職名である。ところが、その陰陽師を任命すべき国家機関たる陰陽寮の長であり、陰陽道宗家の土御門家による支配は明治時代に廃止され、それと同時に陰陽師制度もこの世から消滅してしまった。だから、明治から現在に至るまで「陰陽師」なるものは存在していないはずなのである。
 これは、伝統的な陰陽道を研究している人々やその技術を継承する人間たちにとっては常識であり、暗黙の掟であって、私も「陰陽師」を名乗っていないのである。また、易や陰陽五行系の占い(四柱推命や六壬・奇門遁甲・九星気学など)が出来て、神道系や密教・修験系などの祈祷法・祓い法の心得があっても、それは「陰陽道」「陰陽師」とはまったく別物である。それゆえ、世間の自称「陰陽師」さん達は自ら進んでその正体を明かしていることになってしまうから、その将来に悲惨な結果を招くのではないか、と私はいつも危惧している。…(中略)…ちなみに、「陰陽師」という名称はあの人気小説、そして映画化された「○○師」の原作者の作家さんが商標登録しているので、「陰陽師」なる言葉を使用するのなら、その作家さんに一言話しを通しておかなければいけない、ということをご忠告申し上げておくので、くれぐれもご注意を…。

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       【過去タイトル】
        ●「映画指導」の裏話
        ●「陰陽道指導」の裏話
        ●「戦国時代の陰陽道」
        ●「暦のお話」
        ●「陰陽不将日」
        ●「占いにおける戦時と平和時の使い分け」
        ●ドラマ指導打合せのレジメから…「鬼一法眼の話」
以下、続々更新中!!!